朝日新聞会見詳報

http://sankei.jp.msn.com/affairs/group/affairs-26126-g1.htm
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140911/crm14091120300030-n1.htm

 (19:30〜19:40)

 《東京電力福島第1原発事故をめぐり、政府が吉田昌郎所長(当時)への聞き取り調査の結果をまとめた「吉田調書」について、朝日新聞社が11日午後7時半から記者会見を開いた》

 《問題の記事は、5月20付の朝刊。調書は非公開扱いになっており、「所長命令に違反、原発撤退」として大々的に取り上げた。朝日が問題にしたのは、東日本大震災から4日が経過した平成23年3月15日の朝の第1原発の所員の対応だった》

 《「第1原発の所員の9割にあたる約650人が吉田氏の待機命令に違反し、10キロ離れた福島第2原発へ撤退した」と断じた上で「東電はこの命令違反による現場離脱を3年以上伏せてきた」「葬られた命令違反」と東電の対応を批判していた》

 《しかし…。産経新聞は8月18日付朝刊で「命令違反の撤退はなし」と解釈が正反対の内容の記事を報じた。調書の内容を精査、当時現場にいた複数の元所員からも裏付け取材を行い掲載した》

 《他社も追随した。NHKは8月24日、読売新聞は8月30日付朝刊、共同通信も同日に配信し、いずれも「命令違反ではない」と指摘。読売は社説で「朝日新聞の報道内容は解せない」と疑問を呈した》

 《毎日新聞も社説で「誤解を広め、冷静な議論が妨げられた可能性がある」と指摘した》

 《朝日新聞の報道が出た際、当時現場にいた所員からは怒りの声が広がったという。特に吉田氏の遺族の心労は大きく、涙を流したとされる》

 《記者会見で、朝日新聞側は記事掲載の経緯をどう説明するのか、注目が集まる。東京・築地の記者会見場には、大勢の報道陣が詰めかけ、受け付けに列をなし、開始時間が少し遅れると担当者が告げる》

 《予定より1分遅れた午後7時31分、木村伊量(ただかず)社長ら幹部が姿を現した。おびただしい数のフラッシュがたかれる》

 木村社長「朝日新聞東京電力事故調査委員会が行った吉田所長への聴取、いわゆる吉田調書について政府が非公開としていた段階で独自に入手致しまして、5月20日付で第一報を報じました。その内容は3月15日朝、東電社員の9割にあたる650人社員が、吉田所長の待機命令に違反し、10キロ南の福島第2原発に撤退をしたというものでした」

 「吉田所長の発言を紹介して、過酷な事故の教訓を引き出し、政府に全文公開を求める内容でした。しかし、その後の社内での精査の結果、吉田調書を読み解く過程で評価を誤り、命令違反で撤退という表現を使った結果、多くの東電社員らがその場から逃げ出したかのような印象を与える間違った記事だと判断致しました。『命令違反で撤退』の表現を取り消すとともに、読者および東電のみなさまに深くおわびを申し上げます」

 《木村社長は深く頭を下げ、再びフラッシュがたかれた。その後、木村社長は着席して続ける》

 木村社長「これに伴い、報道部門の最高責任者であります、杉浦信之編集担当の職を解き、関係者を厳正に処罰を致します」

 「むろん経営トップとして私の責任も逃れません。報道にとどまらず、朝日新聞に対する読者の信頼を大きく傷つけた危機だと重く受け止めており、私が先頭に立って、編集部門の抜本改革など、再生に向けておおよその道筋をつけた後、速やかに進退について決断します。その間は社長報酬を全額返納します」

 「吉田調書は朝日新聞が独自取材に基づいて報道しなければ、その内容が世に知らされることはなかったかもしれませんでした。世に問うことの意義を大きく感じていたものであるだけに、誤った内容の報道になったことは痛恨の極みでございます」

 「現時点では、記者の思い込みやチェック不足が原因と考えていますが、信頼回復と再生のための委員会を早急に立ち上げ、あらゆる観点から問題点をあぶりだし、読者のみなさまの信頼回復に何が必要か、検討してもらいます」

 「同時に誤った記事がもたらした影響について、第三者機関に審理を申立てました。速やかな審理をお願いし、その結果は紙面でお伝えします」

 《木村社長は淡々と説明を続ける》

 (19:40〜19:50)

 《東京電力福島第1原発事故をめぐり、政府が吉田昌郎所長(当時)への聞き取り調査の結果をまとめた「吉田調書」について、朝日新聞社の開いた会見は、冒頭から木村伊量(ただかず)社長の発言が続く。木村社長は、吉田調書に続き、「慰安婦」に関する朝日新聞の報道についても、言及を始めた》

 木村社長「今日の会見は吉田調書に関してだが、この間ご指摘いただいている慰安婦報道についても説明させていただきます。(8月)5、6日に、慰安婦問題の吉田清治氏の証言は虚偽と判断し取り消しました」

 「ただ、記事を取り消しながら謝罪がなく批判をいただきました。反省するとしましたが、事実を旨とする報道であるべきでした。誤った報道と謝罪が遅れたことにおわび申し上げます」

 「PRC(朝日新聞社の第三者機関「報道と人権委員会」)と別に、ジャーナリストや歴史学者で第三者委員会を立ち上げ、特集紙面の妥当性と朝日の慰安婦報道が妥当だったか徹底して検証し、この結果を紙面でお知らせします」

 《無数のフラッシュがたかれる中、木村社長は淡々とおわびの言葉を述べている》

 木村社長「吉田調書のような調査報道や慰安婦のような報道は読者の信頼があってこそです。今回の事態を大きな教訓としつつ、さまざまな批判に耳を澄まします。初心で組織を再構築します。厳しく見守っていただければと思います。よろしくお願いいたします」

 《ここから記者との質疑応答に移り、マイクが記者に渡った》

 記者「社長の進退についてはどう考えるか」

 木村社長「先ほど申し上げましたが、今の段階で具体的に言うのは避けたいと思います」

 記者「記事そのものを取り消すのか。また、いつどのように疑義が生じたのか」

 《杉浦信之編集担当取締役が席を立ち、答え始める。会場内では、記者のパソコンをたたく音が大きく響いている》

 杉浦取締役「(福島第1原発にいた東電社員が)『命令違反で撤退』という表現は記事の根幹にかかわり、見出しも間違いということで、取り消すことが当然と考えました」

 《声が聞きづらいという記者からの指摘があったためか、マイクの音が少し通るようになった》

 杉浦取締役「朝日新聞東京電力職員をおとしめる記事を書くのかとの指摘がありました。私たちはそんなつもりはありませんでした。他紙と詳細は比較できませんが、チェックが甘くなり反省しています」

 (19:50〜20:00)

 《東京電力福島第1原発事故対応をめぐり、「所長命令に違反、原発撤退」と報じた記事を撤回し、謝罪した朝日新聞。同社が記事の根拠としていたのは、所長として事故対応にあたった吉田昌郎氏=昨年7月死去=が政府事故調査・検証委員会の聞き取りに答えた「聴取結果書」(吉田調書)だ。会見場に集まった報道機関からは、記事撤回に至る経緯について質問が相次いだ》

 記者「1点目は今回、事実の誤りを認めたのか、評価の誤りを認めたのか。2点目は、おそらく今回の報道の根拠として、(平成23年)3月15日の吉田所長の発言があったとされる部分をとられたんだと思う、それについて誤りと判断した根拠は何ですか。最終的な判断の根拠を教えてください。3点目は、8月末に(報道機関に対して)朝日新聞が『誤報ではない』というコメントを出したと聞いている。今日はまだ9月11日。なぜこの短期間に判断が覆ったのか、その点を教えてください」

 《回答したのは杉浦信之取締役編集担当だ》

 杉浦取締役「事実か、あるいは評価のどちらが間違いかといえば、結論から言えば事実です。なぜそう判断したのかという質問と、3点目(の質問)を併せて説明すると、吉田所長が第1(原発)の、線量の低いところに残るようにお話しされた記録が、吉田調書のほかに朝日新聞が独自に入手した資料の中にありました。その時間帯にテレビ会議を通じて、吉田さんがお話しされた。これは吉田さんの命令があったという風に判断しました」

 「結果として、第1から第2(原発)に多くの方が移られたことが外形的に…(確認された)。命令とは違う形の行動になったということで、命令違反と考えました」

 《しかし、多くの所員らにこの命令が伝わったかどうかが、十分に検証されていないことが、後に判明したという》

 杉浦取締役「8月末からの取材班以外の調査で判明しました。(撤回までに)時間がかかってしまったことは、誠に遅いと判断しております。申し訳ございませんでした」

 記者「誤っていたというのは、吉田調書では外形的には(命令が)明言されていたが、伝達がちゃんとされてなかったのが誤りということですか。命令自体は外形的にあったということですか」

 杉浦取締役「まさにその通りでございます」

 《続いての質問者は、朝日新聞から送られてきた「抗議文」について尋ねた。この記者の雑誌媒体では、吉田調書報道に関する記事を掲載したところ、朝日新聞から訂正・謝罪を要求する内容の文書が届いたという》

 記者「(記事の)所長命令に違反して9割の所員が逃げた、とする(朝日の)記述について(記事を書いたところ)、訂正謝罪を要求する、法的措置を検討するという書類をいただいたが」

 《この質問には、喜園(よしぞの)尚史執行役員知的財産・広報・ブランド推進・環境担当が対応した》

 喜園執行役員「いくつかのメディアに、同趣旨の抗議文を出していることは事実です。今日の(記事撤回という)判断に至ったということで、いわゆる抗議の前提となる事実が覆ったと認識しており、これまでの抗議は誤った事実に基づいた抗議であると率直に認め、撤回、謝罪したい。このあと別途、きちっと誠実にご説明し、こちらの対応を検討したいと思っております」

 記者「…」

 《音声が聞き取りづらいが、朝日新聞がこうした抗議文を乱発しているのではないか、との趣旨の質問が出たようだ》

 喜園執行役員「乱発してるかどうかは別として、われわれとして、今回については抗議を申し入れた時点で、われわれとして十分な取材で事実だということ(記事)に対して、誤報だということ(指摘)であれば、きちっと(抗議文を)出すという行為をしていることは事実です。それを乱発と受け取られるかはみなさんの考え。今回の件については、明らかにわれわれの事実の前提が間違ったということです」

 記者「訂正を今日というタイミングでされたのは、今日調書が公開されたからですか。記事の取り消しはどういう形で読者に伝えますか」

 《木村伊量社長がマイクを持つ》

 木村社長「吉田調書に関する処分に関しては冒頭、私がご説明したとおり杉浦の解任。そして、関係者の処分、処罰は厳正に行います」

 杉浦取締役「タイミングということは、吉田調書の公開というタイミングの前に、こうした発表の機会を計画しようと思っていたところ、この発表日が設定されてしまい、その前は現実問題として難しいということで今日になった。記事の取り消しについては、速やかにデータベースも含めて対応していきたい」

 (20:00〜20:10)

 《東京電力福島第1原発事故をめぐり、政府が吉田昌郎所長(当時)への聞き取り調査の結果をまとめた「吉田調書」に関する記者会見は、開始から30分が経過。記者による質問が続いている。カメラのシャッター音が断続的に鳴り、質問は聞き取りづらい》

 記者「思惑を持って記事を書いたのではないか」

 《具体的な記事の執筆に質問が移り、杉浦信之取締役編集担当が回答する機会が増えた》

 杉浦取締役「そういう意図的な記事を書いたのではないかというお話ですが、そういうことではありません。非常に秘匿性の高い資料であったために、この記事の吉田調書を直接目に触れる記者の数をすごく限定しておりました。もう一つは、取材にあたった記者たちはいわゆる福島原発事故の取材を長く続けている、いわば専門的な知識を有する記者でした。その結果、取材班以外の記者やデスクの目に触れる機会が非常に少なく、結果としてチェックが働かなかったと判断しています」

 《ところどころ言葉につまりながら、「誤報」を生んだ背景について説明した杉浦取締役。同じ記者から質問のあった記事の取り消し時期については、12日朝刊で詳しく説明すると述べるに留まった》

 《続いて産経新聞政治部の阿比留瑠比記者が質問を始める。阿比留記者は、「伝言ゲームによる指示で現場に混乱があった」ことを認める吉田氏の証言が朝日の記事から抜け落ちていることを指摘。さらに、菅直人首相(当時)ら政治家に憤っている内容が盛り込まれていないことを取り上げ「何らかの意図を感じるが、そうではないのか」と問うた》

 杉浦取締役「そういう意図があったとはまったく考えておりません。ただし、チェック機能が働かなかったために、ご指摘のような印象を抱かれてしまったことについては強く反省しています」

 《慰安婦報道をめぐっては、ジャーナリストの池上彰氏が、執筆した朝日新聞の謝罪を求めるコラムの掲載を拒否されたとして、池上氏が連載中止を申し入れる事態に発展した。朝日新聞は後日、一転してコラムを掲載し、読者へのおわび記事も掲載した》

 記者「慰安婦報道については池上彰さんの連載コラムを掲載しなかったことについて批判があった。紙面でも説明があったが木村社長のお考えを」

 《記者に指名され、木村伊量(ただかず)社長がマイクを手にした》

 木村社長「いわゆる池上さんの『新聞ななめ読み』というコラムは長い間、朝日新聞の売り物のコラムでした。私も好んで読ませて頂いております。今回、池上さんから原稿を頂いた。その内容が朝日新聞にとっても厳しいものであるという話は編集幹部から聞きました。私は感想は漏らしましたが、編集担当の判断に委ねてあのような経過をたどったということです」

 《判断を編集担当に委ね、自身の責任逃れをしているようにも取れる発言。木村社長はこう続けた》

 木村社長「途中のこととはいえ、途中のやり取りが流れて、言論の自由の封殺であるという、私にとっては思いもよらぬ批判をちょうだいしました。結果として、読者の信頼を損なう結果になったことには私も社長として責任を痛感しているところです」

 《『思いもよらぬ批判』としながらも、自身の責任を認めた木村社長。質問は吉田調書に戻り、朝日の調書の取材班に関する質問が出た》

 記者「取材班の体制は」

 杉浦取締役「非常に流動的な取材班なので、何人と特定してあげることはできない」

 記者「少人数という話だったが」

 杉浦取締役「デスクは1人。記者は何人もおります」

 記者「調書を見られるのは何人か」

 杉浦取締役「その人数については、ここでは申し上げられません」

 《人数に関するやり取りが続いたが、杉浦取締役は『少人数』とした取材班の陣容をかたくなに答えなかった。質問は冒頭に説明のあった、吉田所長がビデオ会議でも第1原発の「線量が低い場所」への避難を命じたとする発言の確認に移った》

 記者「何月何日にどんな文言だったのか」

 杉浦取締役「入手した資料では原発ではない場所でもテレビ会議がモニターであって、テレビ会議を聞いた方がメモした中に第1原発の線量の低いところに退避とメモがあった」

 記者「調書では吉田氏も第2原発に避難して結果的によかったと発言している」

 杉浦取締役「結果的に申し上げれば最初の記事でも書くべきだった。実は朝日新聞デジタルでは取り上げているが、事後的な発言として新聞では割愛した。結果的に新聞で取り上げるべきだった」

 《冒頭、木村社長が『信頼回復と再生』の道筋をつけて進退を決めると話したことに質問が及んだ》

 記者「信頼回復、再生の道筋の時期は。何を持って道筋をつけたといえるのか」

 木村社長「委員会を早急に立ち上げ、編集担当が中心に、どういう問題が根底に宿しているか構造的な問題も含めて、丁寧に曇りのない目で取り組んでいきたい。社内体制の建て直し、信頼回復にリーダーシップを持ってあたる」

 《質問はまだまだ続く》

 (20:10〜20:20)

 《朝日新聞木村伊量社長らによる会見が続いている。木村社長らはカメラのフラッシュを浴びながら、時折、手元に用意した紙に目線を落とし、厳しい表情で質問に答え続けている》

 記者「今回の問題は、編集部内の構造的な問題だったのか、社の資質の問題だったのか、どうお考えか」

 木村社長「そのあたりが、まさに私も今度の吉田調書がこのような結末を招いたことに大変衝撃を受けると同時に、大きな責任を感じています。ここにある要素がなんなのか。一部の取材陣に問題があったのか、チェック態勢もどうだったのか、その辺り含めて、どこに構造的が問題があったのかなかったのかも含めて、もちろん、すべてを第三者委員会に任せるわけではないが、私たちの中でもさらに検証を深めると同時に、第三者委員会の意見も踏まえ結論出したいと思っています」

 記者「今回の調書に関して、海外メディアが『勝手に逃げた』という報道をしていますが、その点について意見をお願いします」

 杉浦取締役「まさに、大変そのことを反省しないといけないと思っている。今回の取り消しの記事も、こうやって発表した後、早急に、少なくとも英文で発信していきたいと考えている」

 記者「それに併せて、慰安婦報道についても、これまで長い間、報じてきたことについて社長ご自身どういう風に考えているのか伺いたい」

 《質問内容が聞き取れなかったのか、小声で質問内容を杉浦信之取締役編集担当に確認した木村社長。一斉にカメラのフラッシュがたかれた》

 木村社長「これも実際に海外でどのように報じられていたかは、一部だが承知している。これがどのようなことなのか、今までのところで、すべて掌握しているわけではないので、このあたりもきちっとフォローしながら報告したい」

 《池上彰氏のコラムの掲載を見送った件に質問が及ぶと、杉浦取締役が回答に詰まる場面があった》

 記者「慰安婦報道について、掲載を最終的に判断されたのか」

 杉浦取締役「池上さんのコラムの一時的な見合わせを判断したのは私です。結果として間違っていたと考えています。社内での議論、多くの社員からの、えー、批判を含めて、えー、最終的に掲載するという判断をしました」

 記者「担当の処分についてはどのようにするのでしょうか」

 木村社長「そういうご指摘もいただいたので、そういうことを含めて検討させていただきます」

 記者「吉田調書の命令違反ですが、当時の作業員の方に事実確認はしたのか」

 杉浦取締役「その点取材が極めて不十分でした。先ほど申し上げた、テレビ会議で吉田さんの命令が出ていたということを持って、当然テレビ会議なので吉田さんの周囲にいる人たちが聞いているという前提、それを聞いて、逃げに行きましたという方は結果としていらっしゃらなかったと聞いている。そういう意味では職員への取材が十分でなかったと認めないといけない」

 《慰安婦問題の検証報道で謝罪がなかった点について再度質問があり、再び木村社長が答えた》

 記者「慰安婦報道について謝罪されたと思うが、8月の段階でこのような記者会見を考えていたか」

 木村社長「ご承知の通り、8月5、6日で検証しました。今でも私ども、この内容については、自信を持っています。ただし、冒頭の説明でもありましたが、吉田証言を取り消したにもかかわらず謝罪がなかったということと、それからもう一つ、長きにわたって長きにわたって、遅きに失したということについては、やっぱり、5日の紙面で訂正しておくべきじゃなかったのかな、謝罪しておくべきではなかったのかなと思いました」

 「ただし、その後、皆さんからご批判を受けた中で、ある機会の中で、誠意を持ってこの間の足らなかったことに関して謝罪しないといけないという思いに至りました。それが、たまたまこういうことで、お集まりいただいたが、併せてご説明させていただいたということです」

 《木村社長は汗を額に浮かべながら、弁明を続けた》

 木村社長「5日紙面がすべてで、今から考えれば、遅くなったことを含めて、ちゃんと読者におわびを申し上げることじゃなかったかと反省を述べているところです」

 (20:20〜20:30)

 《東京電力福島第1原発事故をめぐり、政府が吉田昌郎所長(当時)への聞き取り調査の結果をまとめた「吉田調書」についての朝日新聞社の会見。朝日新聞側は、吉田所長の命令に違反し、多くの社員らが撤退したとする間違った内容の記事の要因は、今のところ、記者の思い込みやチェック不足だと説明している》

 記者「命令を聞いたという職員の方の取材は行ったのですか。この点は大事なので確認させてください」

 杉浦信之取締役編集担当「取材はしたが話は聞けなかったということです」

 記者「1人も話を聞いていないのに記事にしたのですか」

 杉浦取締役「はい」

 《質問は再度、朝日新聞慰安婦問題報道にも及ぶ》

 《9月2日にジャーナリストの池上彰氏が、朝日報道を批判したコラムの掲載を拒否されたとして、同紙での連載中止を申し入れたことが判明。だが一転して4日付朝刊にコラムを掲載し、6日付朝刊で「間違った判断」とする東京本社報道局長名のおわび記事を掲載。対応は後手に回った》

 記者「池上さんの件ですが、連載中止の詳しいやりとりを教えてください」

 杉浦取締役「細かい内容はお互いに公表しないということになっておりますので、お答えできません」

 記者「なぜ掲載中止に至ったのか」

 杉浦取締役「紙面でご説明した通りでございます。当時は朝日新聞を取り巻くさまざまな環境があり、私としても池上さんのコラムに過敏になりすぎた。結果として判断が間違っていました」

 記者「杉浦さんが判断されたというが、紙面では報道局長が説明している」

 杉浦取締役「朝日は通常、このような場合、局長が説明することになっています」

 《質問は慰安婦報道の中身にも及ぶ》

 記者「8月の特集記事では吉田証言を取り消したが、多くの朝鮮人女性が無理やり連れて行かれたことは否定していない。今も見解は変わらないのか」

 杉浦取締役「強制連行は、そういった事実はないと認めた。しかし、いわゆる慰安婦、自らの意思に反して軍に性的なものを強いられる。広い意味での強制性はあったと考えている」

 《多方面での質問がおよび、幹部らは疲れた表情を浮かべながらも淡々と答えていく》

 (20:30〜20:40)

 《東京電力福島第1原発事故対応をめぐり、「所長命令に違反、原発撤退」と報じた記事を撤回し、謝罪した朝日新聞木村伊量社長らの会見が続いている》

 《記者から朝日新聞幹部に対し、厳しい質問が続く。木村社長の進退について、あらためて記者が質問する》

 記者「社長の進退は委員会を立ち上げて決めるのか」

 木村社長「私が先頭に立って編集部門を中心とする抜本改革を行い、再生に向けておおよその道筋をつけた上で進退を判断いたします。それ以上でも以下でもありません」

 《途中、社長の声が聞こえづらいところがあり、「もっと大きな声で話してください」との声が飛び、木村社長は改めて声のボリュームを上げて再び答えた》

 記者「朝日新聞は調査報道をやめるのか。それを変えると朝日新聞は変わってしまうのではないか」

 杉浦信之取締役編集担当「検証報道は、朝日新聞としてこれまでやってきた成果を含め、今まで以上に強化していくという姿勢に変わりありません。今回の問題の反省に立って調査報道を続けていきたいと考えております」

 記者「社員には今回のことをどう伝えたのか」

 杉浦取締役「朝日新聞デジタルで早急にアップしていきます」

 記者「朝日に検証能力があるのか。どういった思いで取り組むのか」

 木村社長「厳しい指摘を受けたと思っております」

 《木村社長は時折口を一文字に結ぶ。言葉を選びながら答えていく》

 木村社長「曇りのない目できちっと判断していきます。われわれの立場はご説明しました」

 《木村社長は時折視線を落とし唇をかむ》

 記者「朝日新聞に自浄能力はあったのか」

 木村社長「自浄能力があったかどうか、きちんと検証していきたいと思います」

 《木村社長の声が少し小さくなる》

 記者「どのような経緯で会見することになったのか」

 喜園尚史執行役員知的財産・広報・ブランド推進・環境担当「(会見の日時が)きちんと固まった上で説明すると申し上げました。正式なお知らせができるようになったらお知らせするということでした。お知らせできるという段階になったら、お知らせさせていただこうと思っておりました」

 (20:40〜20:50)

 《東京電力福島第1原発所長として事故対応にあたった吉田昌郎氏=昨年7月死去=が政府事故調査・検証委員会の聞き取りに答えた「聴取結果書」(吉田調書)に基づく記事の撤回を表明した朝日新聞の会見は、開始から1時間以上が経過しても、質問者の手が上がり続けている》

 《会見場の前方には、朝日新聞幹部として木村伊量社長、杉浦信之取締役編集担当、喜園(よしぞの)尚史執行役員知的財産・広報・ブランド推進・環境担当の3人が着席。質問内容に応じてそれぞれ回答する》

 記者「本日の会見の経緯について伺います。本日、何度か広報に連絡しましたが『まだ発表することはない』と言われました。しかし、朝日新聞の記者が『社長の会見がある』と(短文投稿サイト『ツイッター』で)ツイートしていた。どのように会見をすることにして、発表したんですか」

 喜園執行役員「すべて段取りが固まった段階で、お知らせするということをやらせていただいた。色々な情報が流れたが、組織としてはきちっと(会見概要を)連絡できるときに連絡した。基本的に、(会見は)何時からどこ、とお知らせできるというところで、今回もお知らせさせていただきました」

 《続いて、記者が木村社長に質問。木村社長はこの日の会見の冒頭、『編集部門の抜本改革など、再生に向けておおよその道筋をつけた後、速やかに進退について決断する』と表明していた》

 記者「もし後継者に道を譲るとした場合、個々人の記者の実名で、時に社を批判するツイートをするなどの自由な社風は残しますか」

 木村社長「たとえ社長に向けられた批判であれ、(発信に)制約をかけるような暗い社会、監視社会にしてはならないというのが私の信念です。仮定の質問へのお答えは避けさせていただくが、後任者も朝日新聞の幹部である以上、(批判を封殺しないのは)当然のことと考えています」

 《再び、質問が朝日新聞慰安婦問題報道に及んだ》

 記者「御社の報道が、国際的非難を呼んだことについて」

 杉浦取締役「朝日新聞慰安婦報道がどのようにそういった問題(国際関係など)に影響を与えたかを、朝日新聞自身が総括するのはなかなか難しい。新しい第三者委員会に具体的検討を委ねたい」

 記者「木村社長に伺いたい。真実だと思うことが誤報ということもあるだろうが、今回なぜこのように大きな問題になってしまったのか。なぜだと考えていますか。朝日新聞だったからなのか、対応に問題があったのか」

 木村社長「私の方からお答えさせていただきます。冒頭の説明でも申し上げましたが、このような、朝日新聞の信頼を根底から覆すようなことが起き、読者の信頼…、東電関係者にご迷惑をおかけしたことは失点として記者会見させていただいた。これは一部の記者の問題であったのか、もっと根深い問題があるのかも含め、われわれの社内の委員会で追及するとともに、社外でも第三者委員会を立ち上げ、違う観点からじっくりと徹底的に検証していきたい」

 記者「それは、(なぜ大きな問題になったか)分からないということですか」

 木村社長「現時点ではこういうことであろうかと、記者の思い込み、記者のチェック不足が重なったのが原因と今のところ判断してると、報告を受けているが、別の問題があるのかも、構造的問題があるのかも含めて検証していきたいと思います」

 記者「第三者委員会とか人権委員会でやるのもいいが、この問題というのは上から考えてこういうことなんだ、ということでなく、なぜこういうことになったのだろうと、そういうところから考えないと直らないのではないか」

 杉浦取締役「吉田調書の問題については、まずは朝日新聞自ら、全社の中から検証を、問題の原因がなんだったのかという議論をやろうとしています。次の編集担当、現在の局長とともに話を進めているところです。朝日は福島第1原発事故の後、『原発とメディア』という連載もしています。そういった蓄積を生かしながら、今回の問題についてもどういった問題があったのか検証していきたい」

 記者「2点あります。吉田調書報道について、週刊誌への抗議文を撤回するということだった。朝日新聞の紙面を通じて、雑誌に抗議した事実を記事として掲載していたが、こうした記事も撤回するんですか。社長は『記者の思い込み』などと言っていたが、具体的にどういうことですか」

 喜園執行役員「確かに朝日新聞の紙面で(雑誌に)抗議したことを記事にしました。その抗議は撤回するということですから、(記事も)誠実にきちっと対応していこうと思います」

 杉浦取締役「記者の思い込みというのは、まさに(所員が吉田所長の)命令違反(となること)を知っていて意図的にそれに背いて、第2(原発)に撤退したという、そういう思い込みということでございます」

 (20:50〜21:00)

 《記者会見が始まってまもなく1時間半になろうとしているが、質問が途絶える気配はない。質問に立った記者は『所長命令に違反 原発撤退』とした記事を誤報とし、取り消す判断をした朝日新聞の真意を問い始めた。記者と杉浦信之取締役編集担当のやり取りが数問続く》

 記者「誤報と認めたことはいいが、何を誤りと考えているのかがあいまい。命令はあったが伝わっていなかったことを誤りというのか、命令があったかどうかもさだかではないのか」

 杉浦取締役「命令があったことは事実と考えています。しかし、東京電力の職員が命令を知っていながら、意図して背いて第2原発に撤退してしまったという事実はなかったということです。つまり、命令が行き届かなかったり、混乱のなかでその命令を聞いた人たちまでがすべて第2に撤退したという印象を与える記事を書いたことが間違いだったと思います」

 記者「命令はあったとすれば、吉田所長の伝え方が悪かったのか、途中の人がきちんと伝えなかったのか−所内の問題があったという印象も残る。そもそも、命令があったと認定した根拠は何なのか」

 杉浦取締役「少なくともテレビ会議システムで、吉田さんの『第1原発のところに退避するように』という音声というか、が記録されていますので、テレビ会議を聞いた人には命令はあったと考えています」

 記者「命令を聞いた第三者に確認をしたのか。聞き取った他の原発でのメモだけが根拠なのか」

 杉浦取締役「現時点ではそういうことです」

 《杉浦取締役はテレビ会議を聞いた人のメモが『命令があった』とする根拠と説明した。しかし、記者は朝日新聞が根拠にしているとみられるメモの内容を示し、さらに質問を続ける》

 記者「メモでは『線量の低いところに行きなさい』と言っている。さらに、吉田調書では『線量の低いところがなければ、第2原発に行きなさい』と言っている。これは条件付きではないか。命令はあったと断定すると(命令の)伝え方や部下の問題という印象が残るのではないか」

 杉浦取締役「ご指摘の通りだと思います。最初の命令はあったと思っておりますが、そこから違反に結びつくかという吟味。混乱があったり、やむを得ない事情で第2原発に行った人まで違反としたことが過ちだった」

 記者「今後、その辺りを含めてさらに事実解明をする計画は」

 杉浦取締役「ございます」

 記者「信頼回復の委員会の中身を具体的に」

 杉浦取締役「私の後になる編集担当と私、各本社の局長を中心に考えていこうと思います。東京だけではなく大阪、名古屋、西部の編集局も心配していますので全社あげての参加を考えている」

 《全社をあげて信頼回復に取り組むことを宣言した杉浦取締役。質問は別の記者に移り、再び吉田調書報道の背景に見え隠れする“思惑”を問い始める》

 記者「吉田調書を普通に読むと、あのような報道にはならないと感じる。ある方向性が決まっていて、都合のいい発言があったのでその部分だけを引っこ抜いたという印象を受ける。慰安婦報道とまったく同じ構図ではないのか」

 杉浦取締役「都合のいい方向に記事をねじ曲げるということはまったくございません。いま、ご指摘のようなご批判があることは、この間で承知しているが、慰安婦報道も含めて事実に忠実に記事を書く方針、当たり前でありますが、ござい…」

 《声がうまく聞き取れないが、事実に忠実に記事を書く方針が『ございません』とは言わないだろう》

 《朝日新聞の撤退報道については、海外メディアなどが吉田氏や福島第1原発の作業員を批判した》

 記者「報道の被害を受けたのは(収束作業にあたった)福島50(フィフティー)の方々や吉田さんのご家族だと思うが、こういった方々に直接の謝罪することは考えているか」

 杉浦取締役「何らかの形で、どういう対応ができるのか真剣に対応して参りたい」

 《別の記者に質問が移る》

 記者「膨大な調書でいろいろな論点があるなか、なぜ撤退問題にこだわって、ひっかかったのか」

 杉浦取締役「社としてというよりは取材班の問題意識から出てきたと考えています。限りある紙面では、第一報は訂正させていただいた撤退だが、その後の続報、朝日新聞デジタルの大量の(記事)ではそれ以外の論点も取り上げている」

 《あくまでも『取材班の問題意識』を強調する杉浦取締役。質問は32年にわたって掲載を続けた慰安婦問題の「吉田証言」にも及んだ》

 記者「吉田証言が嘘だというのは学会でも常識になっていた。なぜこれだけ遅れたのか、90年代に訂正することはできなかったのか」

 杉浦取締役「1997年3月に一度、慰安婦問題の検証をしています。その時は吉田証言について真偽が確認できなかったという形で総括し、その前ぐらいから吉田証言については紙面化していませんでした。しかし、正式に取り消すまでにこれほど長くかかってしまった。遅きに失したとのご指摘は免れないと思います」

 記者「なぜ、気がつかなかったのか」

 杉浦取締役「90年代にどういった議論があったのかは、今回の新しい第三者委員会も含めて検討しますが、改めてわれわれ自身も検証したいと思います」

 《たたみかけるように経緯を問う記者に、杉浦取締役は苦しい回答に終始した》

 (21:00〜21:10)

 《朝日新聞の会見が始まってから1時間半以上が経過した。慰安婦報道の責任について改めて質問が及ぶと、木村伊量社長はあくまで、個人的な意見として回答を述べた》

 記者「慰安婦の責任問題について」

 木村社長「慰安婦の問題は長い時間が経過した過去の事案について、関係者の責任をどう問うのか、かなり難しい側面があるという風に私は認識しています。会社を退職した方もいるし、亡くなっている方もいるし、私個人としては誰かの具体的責任を取ってさかのぼって処罰するのは難しい問題と考えているが、これも含めて新たに設置をお願いしている第三者委員会の結果を踏まえて総合的に判断していこうと思っています」

 記者「杉浦信之取締役編集担当は今日付で解任なのか。また、関係者の処分も、今日付か」

 木村社長「杉浦の後任者を明日付で発表するので、それと同時に任期が切れる。関係者の処分については、きちっとした形で(後日)お知らせすることになると思う」

 《挙手をする記者は一向に減らない。ここで、名指しで指名されたのが、産経新聞政治部で慰安婦報道に携わる阿比留瑠比記者だった》

 司会者「阿比留さん、どうぞ」

 阿比留記者「8月5日の慰安婦検証について伺う。内容に自信があると先ほど社長がおっしゃいましたが、あの記事の中で、植村隆元記者の記事の中に事実のねじ曲げはないと書かれている。しかし、(元慰安婦の)金学順さんが親に、妓生(キーセン)へ売られたことは周知の事実ですし、その後の植村さんの記事は訂正されていない。明らかな事実のねじ曲げであると思いますが、いかがですか」

 杉浦取締役「朝日新聞としては、妓生イコール慰安婦だから仕方ないという考え方は取っていません。妓生学校にいたということをあえてそこで触れる必要はないと考えていた。それは当時の植村記者も同じであり、その後も同じだと考えている。そういう意味で、ねじ曲げではないと考えている」

 阿比留記者「そうすると、金さんがまさか自分で『戦場に連行された』と言ったということですか。ほかの裁判やインタビューでは、そういうことを一切言っていないですよ」

 杉浦取締役「あの記事の中に書いてある通りで、当時の慰安婦と挺身隊の混同について、あの記事については混同があったということは訂正している」

 阿比留記者「『訂正』という言葉を(検証記事の中で)使っていないと思うのと、あと女子挺身隊と慰安婦の混同、8万人から20万人の女性を強制連行という大嘘、その他諸々については、今回、謝罪される考えはありませんか」

 杉浦取締役「8月5日の記事に書いてある通りです」

 《杉浦取締役が大きめの声で答えたところで、阿比留記者の質問が終わった。別の記者が指名され、木村社長の進退について聞いた》

 記者「今回、検証をして、ご自身の進退についての決断をしなければいけない理由については、吉田調書と慰安婦問題のどちらの方が重いと考えているか」

 木村社長「最大のテーマである吉田調書をめぐる、おわびが中心であることは間違いありません」

 記者「池上さんのコラムの件で、経緯をもう一度確認したい。具体的にどういう検討が行われて、掲載に至ったのか」

 杉浦取締役「内容について具体的に申し上げるのは差し控えます」

 記者「吉田証言について読者から批判を受けたということだが、批判的な意見を掲載されたことはあったか」

 杉浦取締役「慰安婦問題、池上さんの話については、投書が載っていたと思います。すべてを把握していないので、吉田調書についてどうだったかというのは定かに答えられません。今回の発表を受けて、読者からお叱りの声があると思うが、そういったものには誠実に対応していきたいと思います」

 《今後の読者対応について語った杉浦取締役。次の質問に備えて、マイクを置いた》

 (21:10〜21:20)

 《東京電力福島第1原発事故をめぐり、政府が吉田昌郎所長(当時)への聞き取り調査の結果をまとめた「吉田調書」についての朝日新聞社の会見が続く》

 《朝日新聞は会見で、5月20日付朝刊の「所長命令に違反、原発撤退」とした記事の誤りを認め撤回。その上で木村伊量(ただかず)社長は、社内の態勢が整った後で自らの進退についても決断すると言及している》

 記者「進退を明らかにするのは、慰安婦問題か、それとも吉田調書か」

 木村社長「慰安婦問題については、冒頭に説明させていただきましたが、8月5日の検証の中で至らざるところがあったと。遅きに失したということについては遺憾に思っていますし、おわびさせていただきたい」

 「しかし、検証の内容につきましては、全く自信を持ったものですし、慰安婦問題をこれからも、こうした過去の問題はあったにせよ、それをきちんとした反省の上で、われわれはこの問題を、大事な問題、アジアとの和解問題、戦地の中での女性の人権、尊厳の問題として、これからも明確に従来の主張を続けていくことは、いささかも変わりません」

 「今回の、この吉田調書報道をめぐるおわびについて、大変深く反省をし、全体的に責任も感じていますので、私は最終的に判断すると明確に申し上げたい」

 《木村社長は慰安婦問題については、これからもスタンスを変えないことを明確に宣言した》

 《続いて、記者は吉田調書の問題に質問を戻す。誤った報道がなされた要因として、朝日新聞側は、記者の思い込みやチェック不足を挙げた》

 記者「記者の思い込みやチェック不足があったということだが、具体的に思い込みというのはどういうものか」

 杉浦信之取締役編集担当「命令があったということから、命令違反があったという思い込み。そこから、さまざまな今回の問題が生じました」

 記者「調書からは命令違反があったというのは、どうしても読めない。意図的なねじ曲げではないのか」

 杉浦取締役「私自身としては、ねじ曲げはなかったと思う。しかし、結果として、ご指摘があったことを、真摯(しんし)に受け止めます」

 記者「吉田所長ら遺族への謝罪の考えはあるのか」

 杉浦取締役「記者会見を開き、それを紙面化しておわびも申し上げることが最初のわれわれに課せられたものだと考えています。今後のことは、これから考えていきます」

 《取材班は“誤報”の批判が寄せられた後、検証紙面を何度か希望していたいという》

 記者「取材班は検証取材をしたいとしていたというが、自分たちが間違ったことを認識していたということか」

 杉浦取締役「検証は、われわれが今やっているものとは違うと思います」

 記者「正当性を検証するというものか」

 杉浦取締役「どちらかというと、そういう側面があると思います」

 記者「他紙の取材を受ける過程で間違いに気づいたのか」

 杉浦取締役「調査の指示は当然出していましたが、取材班とは別の、独立したデスクや新たな目で、記事や資料を精査する者をさらに投入する中で、今日の判断になりました」

 《まだ質問を望む記者もいたが、進行役が打ち切り、2時間近く続いた会見は終わった。木村社長らはフラッシュがたかれる中、厳しい表情で会見場を後にした》