国会の閉会中審査(加計学園問題)のNHK記事

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170710/k10011052791000.html

前川前次官「行政ゆがめた」 地方創生相「一点の曇りなし」

7月10日 18時34分

 国家戦略特区での獣医学部新設をめぐって、参議院の閉会中審査が開かれ、参考人として出席した文部科学省の前川・前事務次官は、新設の決定に総理大臣官邸の関与があったのは明らかで、行政のプロセスがゆがめられたと改めて主張しました。
 これに対し、山本地方創生担当大臣は、プロセスには一点の曇りもなく、ルールに基づいており、総理大臣官邸の意向が入る余地はないと反論しました。


前川前次官「官邸の関与明らか」

 国家戦略特区での獣医学部新設をめぐって、参議院では衆議院に続いて、閉会中審査となる文教科学委員会と内閣委員会の連合審査会が開かれました。

 この中で、参考人として出席した文部科学省の前川・前事務次官は、獣医学部新設の経緯について「和泉総理大臣補佐官から直接の働きかけがあり、和泉補佐官を中心として、総理大臣官邸の関与があることは明らかに推測される。また、京都産業大学の提案との比較、検討がきちんと行われたのかどうかも明らかでなく、不明朗なところが多い」と指摘しました。
そのうえで、前川氏は「私が『ゆがめられた』と思う部分は、規制緩和の結果として、『加計学園』だけに獣医学部の新設が認められたプロセスであり、不公平・不透明な部分があるのではないか」と述べました。


山本地方創生相「官邸など入る余地ない」

 これに対し、山本地方創生担当大臣は、「一点の曇りもなく、ルールに基づいてやってきた。規制緩和は、個人の意見が入ってくるような話ではなく、私ども内閣府と規制監督省庁とがギリギリやり合って、民間議員と意見交換しながら決めていくわけで、個別の案件について、官邸などが入る余地はない。私も全く官邸を気にしたことはない」と述べました。

 そのうえで、山本大臣は、「『4条件がなっていない』などと言うが、『なっていない』と証明するのは文部科学省だ。それができなくて獣医学部の新設が決まったわけであり、全く問題ないと考えている」と述べました。


愛媛県知事「ゆがめられた行政がただされた」

 また、参考人として出席した、前の愛媛県知事の加戸守行氏は、「10年前に、愛媛県民と今治地域の夢と希望を託してチャレンジしたが、厚い岩盤規制で跳ね返され、やっと国家戦略特区の枠で認められ、本当に喜んでいる。岩盤規制にドリルで穴をあけてもらい、ゆがめられた行政がただされたというのが正しい」と述べました。

 さらに、加戸氏は、「今治選出の県議会議員加計学園の事務局長が『お友達』だったからこの話がつながった。『加計学園ありき』と言われるが、声をかけてくれたのは加計学園だけで、愛媛県は、12年間『加計ありき』で来た」と述べました。


文書の信ぴょう性も議論

 一方、質疑では、獣医学部の新設をめぐる一連の文書などの信ぴょう性についても議論となりました。
このうち、文部科学省が調査で確認できなかったとしている、萩生田官房副長官の関与を示す文書について、前川氏は、「事務次官在職当時、担当課から説明を受けた際に受け取った資料と同じものだ。探せば出てくる文書だ」と述べました。

 これに対し、萩生田副長官は、「メモに書いてあるような言葉で回答した記憶はない」と述べ、松野文部科学大臣は、「十分に信頼性のある調査が行われた結果、文書が存在しなかったと認識している」と説明しました。

 また、萩生田副長官が獣医学部新設の条件の修正を指示したと指摘するメールについて、前川氏が「私は在職時に見ていないが、書かれている内容からすると、極めて信憑性は高いと思っている」と述べたのに対し、萩生田副長官は、「そのような指示をした事実はない」と否定しました。


前川前次官「答弁不十分で疑問も残る」

 審議を終えたあと、前川前事務次官は国会内で記者団に対し、「政府内で何があったのか、ちゃんと調べようという動きになっていることは歓迎すべきだと思うが、政府側の答弁は不十分であり、特に内閣府内閣官房の答弁は十分な答えになってない」と述べました。

 そして前川氏は、「なぜ加計学園に決まったか、加計学園に最終的に決まるように条件を付していったところもあり、そこに『官邸の最高レベルが言っている』とか、『総理のご意向』がどのように関係してくるのかも国民の一般の疑問として残っている」と指摘しました。また前川氏は、「内閣府内閣官房に対しても徹底した調査をするよう指示することや、第三者的な組織を設けて調査させることは、総理であればできる。総理が率先して事実解明することを期待している」と述べました。

 一方、前川氏は、「私が知っている限りのことは申し上げたが、『証人喚問で改めて国会で説明せよ』ということであれば、受ける用意はある」と述べました。


萩生田官房副長官「指示出していない」

 萩生田官房副長官は、総理大臣官邸で記者団に対し、「私は国家戦略特区について、基本的に報告を受ける立場であり、具体的な指示や調整を行うことはなく、きょうもそのことは確認をした。獣医学部の新設の件も同様であり、私が安倍総理大臣から指示を受けたり、文部科学省に対して指示を出したりしたことはない」と述べました。

 そのうえで、萩生田官房副長官は、「本日のやり取りを通じて、獣医学部の新設の件に対する私の関わり方が、特定の個人、法人のために何か働きかけ、指示をするようなものでは全くなく、むしろ文部科学省の相談に乗っていた受け身の立場にすぎないということが、一定程度ご理解いただけたのではないか」と述べました。


官房長官「臆測や推測に基づく発言多かった」

 菅官房長官は、午後の記者会見で、「政府としては丁寧に説明をさせて頂いているが、前川参考人との間で意見の違いが大きく見られたと思っている。前川氏の発言全体でも、本人が直接見たことのない文書について臆測や推測に基づく発言が多くあったと思っている」と述べました。

 そのうえで、菅官房長官は「すでに天下り問題で責任を取って辞められた方であり、人事に関して言えば私自身が会見したことと違う部分があった。私からすれば、辞められた経緯について、あのような誤った説明をしたことは理解に苦しむ。私自身は事実に基づいて話をさせていただいた」と述べました。

 さらに、菅官房長官は、前川氏が、文部科学省天下り問題をめぐり、「『他府省に関わるものは出すな』と杉田官房副長官から指示があった」と述べたことに対し、「指示をした事実は一切ない。現に、監視委員会にはすべてのメールが提出されているし、その後、政府として全省的な天下り問題の調査を実施している。こういうことからも明らかだ」と述べました。

 また、菅官房長官は、記者団が、政府として説明責任を十分に果たしたと考えているかと質問したのに対し、「きょうの質問なども繰り返しのことが多かったのではないか。そのような感じがした」と述べました。


獣医師会「政府側の答弁 あいまいで説明不十分」

 閉会中審査を受けて、日本獣医師会北村直人顧問は「政府側の答弁は終始あいまいで何も明らかにされず、全く納得できるものではない。政府側は加計学園がいわゆる「4条件」をクリアしているというが、政府側の答弁ではその説明は不十分だと感じた。むしろ、なぜ、獣医学部規制緩和が必要だったのか、最初から加計学園ありきだったという疑いが深まったのではないか、改めて政府側は国会で説明するべきではないか」と指摘しています。


文科省職員「真相解明ほど遠く」

 閉会中審査について、文部科学省の現役職員のひとりは「新しい事実はなく、前川氏と政府側の主張がそれぞれ食い違ったままで、真相解明にはほど遠いと感じた。なぜ平成30年4月の開学を目指したのかなど、より丁寧な説明が必要ではないか。これでは国民が納得しないと思う」と話しています。

 また、別の職員は「新設のための4条件に合致しているかどうかは、文科省に責任があると言われたが、内閣府側もその責任を十分に果たしていなかったのではないか。前川氏が話していたように、やはり規制緩和加計学園に決まるまでのプロセスには疑問を感じる」と話しています。

前川前次官「加計学園ありき」 地方創生相「新設は適正」
7月10日 12時27分

 国家戦略特区での獣医学部新設をめぐって、衆議院の閉会中審査が開かれ、参考人として出席した文部科学省の前川前事務次官は、新設のプロセスが不透明であり、初めから学校法人「加計学園」ありきで、背景に総理大臣官邸の動きがあったと指摘しました。これに対し、山本地方創生担当大臣は、獣医学部の新設は、岩盤規制を突破するものだと意義を強調したうえで、新設を検討するプロセスは政府が設けた4つの条件に合致しており、適正だったと反論しました。


前川前次官「官邸の関与明らか」

 国家戦略特区での獣医学部新設をめぐって、衆議院では、閉会中審査となる、文部科学委員会と内閣委員会の連合審査会が開かれ、文部科学省の前川前事務次官らが参考人として出席しました。

 この中で、前川氏は、獣医学部の新設の経緯をめぐって「決定のプロセスが非常に不公平で、不透明な部分がある。新設の条件が次々と付く中で、『加計学園』だけが残ることになっており、初めから『加計学園』に決まっていて、プロセスを進めてきたというふうに見える」と指摘しました。

 さらに、前川氏は、「文部科学省は、『新設のための4条件を満たしていない』と主張していたが、有効な反論がないまま決定された。『広域的に』という条件によって、京都産業大学が排除されたのは明らかで、『加計学園』しか残らない形にしたのはなぜか。非常に不透明で、文部科学省からうかがい知れない部分がある」と述べました。

 そして、前川氏は、去年、和泉総理大臣補佐官や、当時、内閣官房参与だった木曽功氏から獣医学部新設について働きかけを受けたとしたうえで、「仕事を進めるにあたっては、背景に総理大臣官邸の動きがあったと思う。中でも、和泉補佐官がさまざまな動きをしていたのは明らかだ」と述べました。

 また、前川氏は、「なぜ事務次官在職時に、こうした発言をしなかったのか」と問われたのに対し、「じくじたる思いもあるし、反省もしている。ただ、国民が知らなければ行政のゆがみを是正することもできないという考え方から発言するようになった」と述べました。

 前川氏は、安倍総理大臣が獣医学部の新設をさらに認める方向で検討を進める考えを示したことについて、「まずは今治市での成果を評価することが必要で、少なくとも10年ほどはかかるのではないか。いますぐ2校目、3校目を作ることは論理的にできない」と指摘しました。

 これに対し、山本地方創生担当大臣は、「国家戦略特区は、地元が提案してやるもので、国が勝手に決めるわけではない。岩盤規制を突破するには、まず、地域を限定したところでやるしかない」と述べました。

 そのうえで、山本大臣は、「獣医師を増やすことは必要なことだが、獣医学部の新設は、52年間もできておらず、地域を限定することによって何とか突破口を開こうとしているわけであり、国家戦略特区の趣旨に沿う」と述べ、国家戦略特区での獣医学部新設の意義を強調しました。
 そして、山本大臣は、新設の決定にあたっては、具体的な需要など、新設を検討する4つの条件に合致していることを、文部科学省農林水産省との間でも確認しており、決定のプロセスは適正だったと反論しました。

 一方、前川氏は、文部科学省が調査で確認できなかったとしている、萩生田官房副長官の関与を示す文書について、「私が事務次官在職中に、担当課からの説明を受けた際に受け取り、目にした文書に間違いない」と述べ、改めて実在する文書だと主張しました。

 これに対し、萩生田副長官は、文部科学省の常盤高等教育局長と面会したことは認めたうえで、「文書のような発言をした記憶はない」と述べ、常盤局長も、「やり取りについて具体的な記憶はない」と述べました。
さらに、萩生田副長官は「私が、安倍総理大臣から指示を受けたり、文部科学省内閣府に対して指示を出したりすることはない。文部科学省から、『獣医師の過不足についての判断は農林水産省でやってほしい』という話があったので、農林水産省に伝えたことはあるが、それ以外に能動的に関わったことはない」と説明しました。

 そして、「文部科学政務官を長くやり、自民党の中で文教政策に携わってきて、文部科学省側にも、私が総理大臣官邸との特別なパイプ役であるという、誤った、甘えの認識を抱かせてしまったという点では反省すべき点があるのではないかと思う」と述べました。

 このほか前川氏は、一連の文書について、「前川氏が文書の流出元ではないか」と質問されたのに対し、「文書の提供者が誰であるかについては、答えを差し控える。さまざまな文書が世の中に出てきており、誰が、どういう経路で、誰に提供したか、さまざまな憶測はあると思うが、私が明確な答えをすべきではない」と述べました。また、参考人として出席した、国家戦略特区のワーキンググループの委員を務める原英史氏は、「『加計学園』ありきなどという指摘は全くの虚構であることは、公開されている議事録を見ればすぐに分かることだ。根本的な問題は、獣医学部の新設禁止という規制が正しいかであり、従来のゆがみをただすための取り組みを進めたものだ」と述べました。


官房長官「文書は確認されず」

 菅官房長官は、午前の記者会見で、文部科学省の前川・前事務次官が、文部科学省が調査で確認できなかったとしている、萩生田官房副長官の関与を示す文書を、実在する文書だと主張したことについて、「文部科学省で追加調査を行った結果、存在が確認されなかったという報告を受けている。確認されていないので承知していない」と述べました。

 また、菅官房長官は、野党側が、安倍総理大臣も出席して予算委員会でも閉会中審査を行うよう主張していることについて、「いずれにしろ、国会で決めることだ」と述べました。


民進 野田幹事長「安倍総理が説明責任を」

 民進党の野田幹事長は記者会見で、「疑惑はさらに深まったと言わざるを得ず、安倍総理大臣に説明責任を果たしてもらわなければ、何も解明にはつながらない。急に、『獣医学部を全国展開する』と言い始めるなど、安倍総理大臣でなければ説明できないこともいっぱいある」と述べ、安倍総理大臣も出席して、予算委員会で閉会中審査を行うよう求めていく考えを重ねて示しました。

 また、野田氏は、記者団から、加計学園の理事長を務める加計孝太郎氏を国会に招致する必要性を問われたのに対し、「大きな当事者であり、官邸の周りや自民党の中にも深い関係の方が複数いたことが疑惑の発生源なので、そういう段階になってきたと認識している」と述べました。