あのハトヤマですら理解した抑止力を朝日新聞はまだ理解していないらしい

朝日新聞[社説](2013/05/21)より
http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit1

敵基地攻撃論―無用の緊張を高めるな
 敵の弾道ミサイル基地などを攻撃できる能力を、自衛隊が持つことを検討する――。

 自民党の国防部会・安全保障調査会が、こんな提言をまとめた。すみやかに結論を出し、政府が年内に策定する新防衛大綱に反映させたいという。

 北朝鮮によるミサイル攻撃への対処などを念頭に置いたものだろう。

 だが、これではかえって地域の不安を高め、軍拡競争を招くことにならないか。そんな危惧を抱かざるを得ない。

 日本の安全保障政策は、専守防衛が原則だ。自衛隊は「盾」として日本防衛に徹し、米軍が「矛」として攻撃を担うという役割分担を前提にしている。

 安倍首相は「盾は自衛隊、矛は米軍で抑止力として十分なのか」と語る。米軍に頼るだけでなく、日本も「矛」の一部を担うべきだという主張である。

 北朝鮮のミサイル問題や核実験に加え、中国の海洋進出も活発化するなど日本を取り巻く情勢は厳しさを増している。そうした変化に合わせて、防衛体制を見直すのは当然のことだ。

 しかし、自衛隊が敵基地をたたく能力を持つことが、本当に日本の安全を高めることにつながるのか。

 政府見解では「相手がミサイルなどの攻撃に着手した後」の敵基地攻撃は、憲法上許されるとしている。一方、攻撃の恐れがあるだけで行う「先制攻撃」は違憲との立場だ。

 とはいえ、日本が敵基地攻撃能力を持てば、周辺諸国から先制攻撃への疑念を招くのは避けられない。

 装備や要員など態勢づくりの問題もある。

 自民党内では、戦闘機への対地ミサイルの搭載や、巡航ミサイルの配備などが検討されているようだが、それで済むほど単純な話ではない。

 北朝鮮のノドン・ミサイルは山岳地帯の地下に配備され、目標の把握すら難しい。情報収集や戦闘機の支援態勢などを考えれば、大掛かりな「矛」の能力を常備することになる。

 その結果、各国の軍拡競争が激化し、北東アジアの安全保障環境を一層悪化させる懸念すらある。財政的にも現実的な選択とは思えない。

 安倍政権は、集団的自衛権の行使容認や、憲法9条改正による国防軍の創設をめざす。敵基地攻撃論は、そうした動きと無縁ではあるまい。

 いま必要なのは、ぎくしゃくした周辺国との関係を解きほぐす外交努力である。無用の緊張を高めることではない。

これが「アメリカの核は悪い核、ソ連の核は良い核」を地で行く思想の末路か。

はたまた憲法前文のファンタジー「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」を信じ込んでいるのか。

飛んできてから対処しろ、という。

目下のところ、軍拡をして緊張を高めているのは中国であり北朝鮮であって、日本ではない。敵基地攻撃能力の用意があるということが、日本への攻撃を思いとどまらせる抑止力になりうるのである。既に中国や北朝鮮にまともな外交努力が通じないことはわかりきっている。彼らは延々と理不尽な要求をし続ける。

「やられなきゃ、やれない」。北朝鮮の不審船を追いかけただけに終わった能登半島沖の不審船事件のときから何も変わっていない。