トランプと外国為替

(追記あり)

トランプ当選以来、それ以前より10円余りドル高円安に振れている。
(1ドル100円台前半)→(1ドル110円台)

 トランプは当選後も、中国とともに日本を名指ししつつ、ドル高への不満を述べているが、日本円は、ドル、ユーロやポンドとともに、自由に取引できる国際通貨の一つであって、東日本大震災のあった2011年以来、為替介入はしていない。(中国の為替介入は明々白々であり、かつ企業は共産党指導下にあり、さらに各種統計の誤魔化しも明らかなので、並べて論じること自体に無理がある。)

 為替水準については、G7でも「通貨安競争の回避」を合意しており、トランプ大統領の指摘は当たらない。2013〜14年前半においては、(主に日本の金融緩和反対派に)その指摘も賛同を得たかもしれないが、少なくとも、現在においては的外れだ。

 また、金融緩和及びその結果として生ずる通貨安を批判するのであれば、リーマンショック以降の米FRBの大規模金融緩和による過度な円高も、同様の批判に晒されてしかるべきだ。しかし、日本はそれをしていない。よって、現在の日本の金融政策も批判されるいわれはない。
 (もっとも、過度な円高は、日本側の不作為による。特にそれを放置した菅直人野田佳彦両首相(それぞれ前蔵相(当時))、白川方明日銀総裁は万死に値する。)

・・・というのが、おおよその模範解答だろう。

 しかし、トランプ大統領に模範解答は通用しないだろう。彼はクレバーだと思うが、同時に政治は初めてだ。

 結局のところ、為替水準への文句に対する答えは

 大統領当選(11月9日)以降の強いドルは、あなたの経済政策への期待の表れである。あなたが「再びアメリカを偉大にする」ことができると信じている。日本はその偉大なアメリカづくりのためにインフラ整備などで大いに協力します。投資をし、技術供与をし、雇用を作ります。

 こんなものではなかろうか。(安倍首相は当然考えていると思うが)

 ひとつの不安は、彼の深層に人種差別があるか否かだ。彼の側近にはその疑いが濃厚な人物もいるらしい。
 その場合、日本企業がいくらアメリカでものづくりをしても、それはアメリカの雇用への貢献とは認めてもらえず、平等に扱われないことになる。

 彼が、アメリカの貿易赤字を嘆く際に、中国、日本、メキシコを名指しするのに対し、ドイツを指弾したという話を聞かない。どう考えてもメルケル首相とは相性が悪そうなのに。(実際にメルケル首相は、仏オランド大統領とともに公然とトランプ大統領の姿勢を批判している。) 彼はドイツ系アメリカ人である。

(※訂正)
トランプ氏はドイツ紙インタビューでドイツの自動車メーカーも「口撃」していました。

http://jp.reuters.com/article/idJP2017011601001972
BMWに35%課税と警告 2017年 01月 16日 22:00 JST

 【ベルリン共同】トランプ次期米大統領は16日付のドイツ大衆紙ビルトのインタビューで、ドイツ自動車大手BMWがメキシコで計画する工場新設について、同工場で生産された車を米国で販売しようとする場合、「35%の税金を課す」と警告した。

 米国の雇用増加を重視するトランプ氏はこれまでにも、トヨタ自動車のメキシコでの新工場建設計画を名指しで批判するなど、内外の大企業に米国に生産拠点を設けるよう圧力をかけている。

 もっとも、目下の重要課題は安全保障問題だと思う。特にG7の安全保障問題における結束の重要性について理解してほしい。
 米は独仏の批判を振り切ってイラク戦争に突入し、戦後処理に失敗している。
 英を筆頭に独仏伊は日米の制止を振り切って中国に接近し、東アジア情勢の流動化と中国の軍事的台頭を助長している。

 英独仏伊の戦争の危機がなくなった今、G7の結束は世界の安定に不可欠と思われる。その上で露中の接近を防止する。それがG7による世界秩序のカギになる。